来談者中心療法

C.ロジャーズが提唱した非指示的カウンセリング


◆ 来談者中心療法

 

来談者中心療法とは、「カウンセリングの神様」と呼ばれた米国の心理療法家カール・ロジャース(1902~1987)が提唱したカウンセリングの思想と手法です。

 

一言でいうと、「ひととひととの『つながり、すなわち関係性』そのものがひとを癒す」という信念で、その根底には「生きた人間としてのひとの尊重と信頼」という人間性中心の思想があります。

 

 

◆ カウンセラーの態度

 

ロジャーズは、それまでの指示的なカウンセリングを否定して、非指示的カウンセリングを提唱しました。

非指示的カウンセリングでは、クライエントがもともと自身が内に秘めている潜在的な力(治癒力)に気づき、それを顕在化させることができるようにひたすら傾聴していきます。

 

ロジャースは非指示的カウンセリングに際し、カウンセラーがクライアントに対してとるべき基本的態度として以下の3つを挙げました。

 

(1)無条件の肯定的配慮、受容、

(2)共感的理解、

(3)自己一致、

 

そして上記をすべて満たした態度でカウンセラーがクライエントに接し、クライエントとのあいだに安心できる関係が作り上げられれば、クライエントの内側に必ず治療的な変化がおこるとしました。

 

今日に至る流れ

 

ロジャーズの思想と受容・共感・自己一致を基本的態度として傾聴していく姿勢は、その後、カウンセラーがとるべき基本的な態度として、心理(精神)療法の流派を問わず広くとりいれられました。

 

ロジャーズは米国心理学会から「20世紀にもっとも影響をあたえた心理療法家」に選ばれました。また日本の心理カウンセリングや産業カウンセリングの考え方にも多大な影響を与えました。 

 

ロジャーズの来談者中心療法の流れを直接引き継いだものとしては、

(1)エンカウンター・グループ(非構成的、構成的)、

(2)フォーカシング(ジェンドリン)、

の二つがあります。

 

両者とも、非指示的な来談者中心の基本思想を引き継ぎながらも、クライエントにより積極的に働きかけようとする手法です。

 

また、ロジャース以降、「聞く」だけではなく「聴く、傾聴する(リスニングlistening)」姿勢がひとのこころや気持ちに働きかけるうえでたいせつという認識はビジネス界にも広がりました。

今日のビジネスや人材開発の現場でも、アサーション、チームビルディング、動機付け、等々「傾聴」のスキルが幅広く取り入れられています。