認知療法

ひとのこころの問題を認知的視点から理解し、思考と信念の変容を図る


認知療法は1960年代はじめ、ペンシルバニア大学のアーロン・T・ベックなどによって提唱されました。

 

今日、認知療法は、うつなどの気分障害、対人恐怖症などの不安障害、回避性パーソナリティー障害など、人間の「考え方や感じ方」に関係するこころの諸問題の解決に有効であることが広く認められています。

ひとの考え方、感じ方、信念そのものを変化させるので、薬物療法と比較して、病気の再発率が低いのが認知療法の特徴です。

 

認知療法は、1950年代に誕生していた行動療法とあわせて認知行動療法とよばれます。

もともと行動療法は試行錯誤の学習理論に基づいていますし、他方、認知療法は主として「情報処理理論(認知モデル)」に基づく治療法ですので、両者は全く別のものですが、治療の現場では組み合わせて使われることが多いのでひとまとめにして認知行動療法と呼ばれています。

 

認知療法は、ひとの感情や行動や身体反応は、そのひとの出来事に対する理解の仕方によって影響をうけるという仮説に立っています。

認知モデルにおける情報処理理論を図で表すと以下のようになります。

 

認知療法では、状況そのものがひとの反応(感情、行動、身体反応)を直接左右するのではなく、その状況と反応の間に状況理解や解釈(自動思考)が介在すると考えます。

更に、自動思考はそのひと固有の中核信念(スキーマ)によって影響を受けます。

 

認知療法では、ひとのうつや不安などの気分を生み出している否定的な考え方や信念に焦点を当て、思考記録表やアクションプランなどを使って否定的な考え方と肯定的な考え方の違いについての学習を進めます。

 

否定的な考え方を悪者扱いするのではなく、否定的な考え方の根拠と肯定的な考え方の根拠を比較しながら、否定と肯定の両方を組み合わせたバランスのとれた考え方が大切であることを学びます。

 

最終的にはバランスのとれた適応的思考ができるようなスキルをクライエントに修得してもらい、クライエント自身が自らの治療者になってもらうことを目的にしています。

  

第三世代の認知行動療法 

近年になって、マインドフルネス認知療法(MBCT)、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)、弁証法的行動療法(DBT)など、認知行動療法のなかに新しい流れが登場してきました。 

この新しい流れは、第一世代の行動療法および第二世代の認知行動療法に対して、第三世代の認知行動療法と呼ばれます。

 

マインドフルネス認知療法は、マサチューセッツ大学地域健康医療センターのジョン・カバットジンによって開発されたマインドフルネスストレス低減法をもとにジンデル・シーガルらによって開発されました。従来の認知療法が「思考内容の変容」を強調するのに対し、マインドフルネス認知療法では呼吸法や瞑想法ーなどのマインドフルネス・スキルを駆使して思考・感情・身体感覚の「脱中心化」を計画的に行うのがおおきな違いです。

 

尚、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)についてはこちらをご覧ください。