学習の理論とカウンセリングの流れ

試行錯誤(トライアンドエラー)の学習と洞察(ひらめきの)学習


◆ 試行錯誤の学習理論

 

わたしたちは、「こうやったら上手くいった」、「ああやったら失敗した」、といった自分または他者の成功失敗経験から学んでいます。 これを試行錯誤の学習といいます。

 

心理学の分野では、有名なパブロフの犬の古典的条件付け実験や、ソーンダイクの試行錯誤や、スキナーの問題箱実験によるオペラント条件付けなどの刺激(S)ー反応(R)研究から発達してきた行動科学の学習理論です。

  

わたしたちは失敗から多くのことを学んでいます。失敗や錯誤というとマイナスのイメージですが、学ぶ姿勢さえあればとても「前向き」でとても有力な学習方法です。 

 「 失敗は成功のもと!」 はまさに至言ということができます。

 

行動科学では、従来観察することが可能な行動だけを研究の対象としてきました。

しかし、第三世代の認知行動療法では、ひとが発言したり考えたりすることも「言語を使った行動」とし研究対象にします。

このように行動を言語行動を含めた広義に解釈するのを徹底的行動主義とよび、従来の考え方を方法論的行動主義とよんで区別しています。

 

 

◆ 洞察学習(ひらめき学習)

 

ところが、私たち人間にはある日突然ひらめいて答えが浮かぶ「あっ、そうか!」現象があります。

何故かは説明できないけれども「ある日突然悟りを得た!」「ある日突然わかった!」というひらめきによる学習です。

 

試行錯誤の学習理論への反論として、ゲシュタルト心理学者のケーラーが洞察による学習の存在を指摘しました。  

現代心理学の本には、「そうした人間の認知構造が突然変化するような現象、試行錯誤によらない知識の再体制化を、洞察学習とよぶ」とあります。

 

この「ひらめき」や「気づき(Awareness)」による洞察学習は類人猿と人間だけにに見られる現象とされています。

  

 

◆カウンセリングの3つの流れ

 

試行錯誤と洞察学習、そのどちらを重視しているかという基準で大雑把にわけると、カウンセリングの流れは以下の3つに分けることができます。

 

(1)無意識を重視し、過去を分析するアプローチ(精神分析論)

(2)試行錯誤学習を実践するアプローチ(認知行動論)

(3)洞察学習による気づきを重視するアプローチ(人間性心理学)

 

(1)精神分析論(精神力動論)

リビドーや夢分析で有名なフロイトは「人間の無意識」に注目したはじめて精神分析家です。精神分析論はその後の臨床家に大きな影響を与えました。

日本ではまだ健在ですが、米国では非科学的ということで精神分析論は徐々に信頼を失いつつあるといわれています。

フロイトの弟子として学び、後に離反した心理学者として個人心理学のアドラーと分析心理学のユングが有名です。

広い意味ではミンデルのプロセスワーク もこの流れに属するようにように思います。

 

(2)認知行動論(Cognitive beharioral therapy, CBT)

試行錯誤の学習を重視する流れです。行動分析学および行動療法として発達し、後者はのちにベックらが提唱した認知療法も取り入れて、認知行動論というおおきな流れになりました。

反復的な学習を通じて不適応を軽減していく行動科学的なアプローチで、今日、エビデンスベイストのこころの病の治療法として広く普及しています。

認知療法、行動療法、対人関係療法、ACT(アクセプタンス&コミットメント セラピー)、マインドフルネス認知行動療法、MBSR(マインドフルネスストレス低減法)などがこの流れに属します。 

 

(3)人間性心理学

マズローが唱えた人間としての自己実現や自己超越をめざすアプローチです。洞察学習による気づき(Awareness)と成長を重視します。

ひとをホリスティックな全体としてとらえ、人間は気づきと成長を通じて病的症状をを克服していくというのが人間性心理学の考え方です。
ゲシュタルト療法、フォーカシング、エンカウンターグループ、ブリーフセラピー、などがこの流れに属します。

心理療法ではありませんが、コーチングも基本的には洞察学習を重視する手法です。