リーダーシップ論

10月から再開する2021年度の「対話の会」の月例会の通年テーマは「リーダーシップを発揮しよう!」です。

なので、リーダーシップ論についてupdateしました。


21世紀のリーダーシップ理論

 

グローバライゼーションの進展とテクノロジーの進歩にともない、リーダーシップの概念や求められるリーダーシップ・スタイルも必然的に変化します。21世紀の多様性と変化の時代に耐えうるリーダーシップ思想や理論があるとすれば、それは何なのでしょうか? ここでは企業というフィールドに焦点を当てて、8つのリーダーシップ論について考えてみましょう。 

  1. 専制君主型リーダーシップ(Tyrants)
  2. ヒーロー型リーダーシップ(Heroic)
  3. 変革型リーダーシップ(Trasformational)
  4. 状況対応リーダーシップ(Situational)
  5. サーバント・リーダーシップ(Servant) 
  6. アプレシアティブ・インクワイアリ―(Appreciative)
  7. リレーショナル・リーダーシップ(Relational)
  8. 質問力を駆使するリーダーシップ(Questioning)

 

1. 専制君主型、2. ヒーロー型リーダーシップ

 

いわゆるトップダウン型のリーダーシップスタイルの代表格です。

専制君主型やヒーロー型のリーダーシップは、人を動機づけて動かすリーダーシップとは相いれないものという考え方があります。しかし現実の社会をみると、社長の指示は絶対という企業や、そこまで極端ではないもののトップダウン型のマネジメントスタイルをとる企業で、業績や企業風土も悪くないという例は結構あります。もしトップがすべてに秀でたスーパーマンのような人間であったとしたら、昔風にいうと善政をひく国王であったとしたら、トップダウン型は意外に効率的なリーダーシップかもしれません。

 

ただし、問題は、今日の多様で変化の速いビジネス環境のもとで、そういうスーパーマンのような、気はやさしくて力持ちの万能選手のようなリーダーを期待することがはたして現実的かどうかです。P・センゲによれば、勝ち続ける組織というのは学習する組織であると言っています。そういう意味で、専制君主型・ヒーロー型リーダーシップにはやや難がありそうです。

 

 

3. 変革型リーダーシップ

 

J. コッターやN. ティシーが1980年代に提唱した理論です。これからは変革の時代であるから求められるリーダーシップは変革型リーダシップであるとし、リーダーの資質面を探求しました。

変革をリードするリーダには、①高いエネルギー、②ビジョン、そして③対人能力、という3つの資質が必要といっています。

 

発表されたの1980年代ですが、その後のグローバル化の進展に伴いまさにJ. W. ガードナーが指摘した通り「不断の変化と変革」が求められる時代になっています。変化と変革を志向する変革型リーダーシップは、まさしく、その時代の流れを先取りしたリーダシップ論といえるのではないかと思います。

 

このリーダシップスタイルの問題点は、もっぱらトップに立つリーダーがどのくらい優秀かによって企業全体の業績が大きく左右されることです。組織の統率面からみると、専制君主型やヒーロー型リーダーシップと同じくトップダウン型のリーダーシップ・モデルに属します。

 

優秀なリーダーに恵まれれば21世紀の変化の時代においても威力を発揮しうるリーダーシップスタイルですが、変革型リーダーには、独断専行的になったり、自身の思い込みによって意思決定したりする危険性が伴います。多様性と変化の速さを特徴とする21世紀の社会では、その危険性が増しているように思われます。

 

 

4. 状況対応リーダーシップ

 

ポール・ハーシーとケン・ブランチャード1970年代に提唱した理論で、その後ブランチャードが改良を重ねて今日に至っています。

すべての状況に適合する唯一絶対のリーダーシップ・スタイルはなく、リーダーは部下の習熟度や意欲と状況に応じて4つのリーダーシップ・スタイルを使い分けなければならないとします。

 

リーダにだけではなく、リードされる部下と状況に焦点を当てる点が他のリーダシップ論とのおおきな違いです。 シンプルでわかりやすく、いろいろな状況に柔軟に適用できる方法論なので今日も健在ですが、発表時期が1970年代なのでやや古さを感じさせる点は否めません。

 

ブランチャードの最新著では、リーダーは部下の性格・行動特性等に応じてどのような支援的行動をとるべきなのかについて行動主義的心理学の立場から考察しています。リーダーシップ・スタイルを状況によって使い分けなければならないとしつつも、ブランチャード自身は支援的なリーダーシップを支持しているように感じます。

 

 

5. アプレシアティブ・インクワイアリー

 

1980年代にデービッド・クーパーライダーとダイアナ・ホイットニーは、組織の価値あるものをアプレシアティブ(肯定的)な質問によって掘り起こし、組織に変化と変革をもたらす方法論として「Appreciative Inquiry(以下AI)」を提唱しました。

 

AIは、これまでのロジック重視の問題解決型のアプローチに代えて、組織メンバーの肯定的な感情や気持ちを重視した「対話的なアプローチ」を重視します。アプレシアティブ・リーダーは部下が本来持っている可能性や強さに着目し、肯定的な質問や、励まし勇気づけるような質問を投げかけることによって部下の力を最大限に引き出し、変化と行動へと動機づけます。 

もっぱら人のポジティブ(肯定的)な感情を重視するのが特徴で、下記のサーバント・リーダーシップと並んでこれからの多様性の時代にかなりの威力を発揮するリーダーシップ理論ではないかと思います。

 

難点を挙げるとすれば、それは組織メンバー全員を一堂に集めて話合いとワークを進めるという組織開発の手法であることでしょう。準備に時間がかかる、大きな会場を確保しなければならない、日々の業務を犠牲にしてすべての組織メンバーを集めることが望ましいなど、いずれも相当な時間と労力が求められます。

 

 

6. サーバント・リーダーシップ

 

R・K・グリーンリーフが1970年に提唱したもので「リーダーたるものは、何よりもまず部下へのサーバント(Servant, 奉仕者)でなければならない」という、リーダーシップ理論というよりは、むしろリーダーシップ哲学です。

リーダーは、部下を力づけ育てること、さらに高度のスキルや能力を身につけて成長してもらうことを第一義に心がけなければならないとします。典型的なボトムアップ型のリーダーシップ・モデルです。

  

サーバントリーダーは決して華々しいリーダーではありません。しかし、今後更にグローバライゼーションが進展し、組織を構成する人々と組織を取り巻く環境がますます多様化し、その多様性から如何に創造力と活力を如何に引き出せるかが組織が生き残るための鍵を握るようになった時に力を発揮するリーダーシップのようにわたしは感じます。

 

というのは、サーバントという哲学そのものが本質的に以下の特徴と性格を備えているからです。 

① チームワークを醸成するという考え方そのものである

② リーダーは常にチームメンバーに付加価値を提供する

③ 成果を求める前に、まず部下を巣立てなければならないという思想である

④ 信頼をもっともたいせつな価値とする

⑤ リーダー自身の成長につながる

 

 

7. リレーショナル・リーダーシップ

 

C・ホーンストラップらが提唱した組織メンバーの日々の相互作用(会話)と関係性に焦点を当てるリーダーシップで、アプレシアティブ・インクワイアリ―と同じように、対話を重視するK・ガーゲンの社会構成主義的な考え方にもとづいています。

また、メンバーの多様性を活かし、いかに主体性とやる気を引き出すかという点に注力するというという意味では、サーバント・リーダーシップにも似ています。

 

アプレシアティブ・インクワイアリ―との違いは、対話を通じて社員全員の総意を一つの方向にまとめていこうとするのではなく、リーダーとメンバーのあいだの日々の対話(相互作用)をより良いものに改善していくための考え方と方法論であることです。

 

リーダーシップ論として物足りなさを感じるのは、もっぱらメンバーの主体性と意欲をひきだすことに焦点を当て、組織全体の進むべき方法性をどう打ち出すかがないことです。同じことは、サーバント・リーダーシップにもいえるでしょう。

 

 

8. 質問力を駆使するリーダーシップ

 

21世紀の時代に求められるのは、これまでの話し方を知るリーダではなく、問い方を知るリーダーであるとするリーダシップ論です。

その前提には、21世紀は多様性・複雑性と変化の時代であること、多様性とインクルージョンが求められること、AIやバイオテクノロジーの登場によってテクノロジーの進歩はさらに加速していくだろうこと、それゆえに変化と変革に対応できる「グローバルでレジリアンスのある経営」が求められることなどの認識があります。

 

これまでA・アインシュタインをはじめ、P・ドラッカー、M・マーコード、J・C・マックスウェルなど多くの人が質問の大切さを説いてきました。質問の根底にあるのは「好奇心」です。そして、質問することの最大の効果は、相手に「学びと成長」のきっかけを提供することです。個々人の学びと成長が積み重なっていくことで、やがて組織や社会に「変化と変革」が生まれます。

 

問題点は、質問は両刃の剣であることでしょう。リーダーは、ただ質問するのではなく、よき質問者にならなければなりません。この点について米国の思想家J・W・ガードナーが素晴らしいことを言っています。

 

「活発に批判する習慣は、社会の革新に欠かすことができない。国を愛するあまり、活力に満ちた批判を遮ってしまうような国民は、自国を救うことができない。しかし、「愛」のない批判、破壊力はあるが制度を育て、強化し、反省させることのできない批判もまた、国を救うことができない」 J・W・ガードナー

 

批判的精神は、愛が伴ってこそ実りあるものになります。従って、21世紀の変化の時代に求められるリーダーは、質問力と共感する力を兼ね備えたリーダーでなければなりません。個人的には、これから「質問力を駆使するリーダーシップ論(仮称)」を構築し、広く提唱していきたいと思っています。 

 


まとめに代えて

 

今後更にグローバライゼーションが進展し、世界市場・経済・社会が複雑さを増し、変化を予測しにくくなる中で、いかに有能なリーダーといえどもひとりで全てを指揮命令するのは難しくなるでしょう。 

従って、これからのリーダーは、先頭にたって部下を引っ張っていくタイプのリーダーシップではなく、チームメンバーの多様性から創造力を引出しつつ、チーム力を高めていくタイプのリーダーシップがより求められるだろうというのは今日多くの人の意見が一致するところでしょう。

 

では、日本ではどういうタイプのリーダーシップが適切なのでしょうか?

専制君主型、ヒーロー型、変革型、状況対応型、AI型、サーバント型、はたまた質問型?

 

すべてのリーダーシップ論に長所と短所があります。結論は簡単には出せません。ただひとつ私たちが注意しなければならないのは、日本と欧米との地政学的、歴史的、文化的な違いだと思います。例えば、日本は島国で均質性が高い、はっきり言わなくても以心伝心でものごとが伝わる、ただし、そのぶんだけ多様性の面は遅れているなどの違いがあります。  

 

従って、欧米で有効だったリーダー像やリーダーシップ論が必ずしも日本でも有効だとは限らないことです。その意味で、私たちは日本発のリーダーシップ論が求められているのだと思います。